夏目漱石『夢十夜』第207夜
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第207夜
こんな夢を見た。
或時サローンに這入ったら派手な衣裳を着た若い女が向うむきになって、洋琴を弾いていた。一間ばかり先にある黒いものはたしかに小僧の云う通り杉の木と見えた。
それでもまだ篝のある所まで来られない。
道具箱から鑿と金槌を持ち出して、裏へ出て見ると、思った所に、ちゃんとあった。立つと膝頭まで来た。その真黒な眸の奥に、自分の手はまた思わず布団の下へ這入った。
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