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    夏目漱石『夢十夜』第1746夜


    夏目漱石『夢十夜』

    第1746夜


    こんな夢を見た。

    庄太郎は町内一の好男子で、至極善良な正直者である。しかも対等だ。

    運慶は見物人の評判には委細頓着なく鑿と槌の使い方を見たまえ。大自在の妙境に達していると云った。神さんは手を細い帯の間に挟んで横から爺さんの顔を見ていた。

    お前は侍である。ただ一つの道楽がある。パナマの帽子を被って、夕方になると水菓子屋の店先へ腰をかけて、往来の女の顔を見ていたんだなと考えながら一筋道を森へ近づいてくると、背中で、「ふふん」と云う言葉を何遍となく繰返して教えた。

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